嘔吐と下痢で心筋梗塞?!

どうもQ二郎です。

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本日の架空症例

夜中2時頃、やっと仮眠に入れた救急救命士だったがそこに出動指令が入った。

70歳女性 嘔吐・下痢

この日は既に15件もの出動があり疲労困憊の救急救命士は少し困惑した。

「胃腸炎くらい朝まで待ってくれよ〜」

コールアセスメントをするまでもなく救急救命士の脳裏には胃腸炎しかなかった。

救急現場に到着するまでに考えること
救急現場に向かうまでに頭の中で行うべき作業があります。非常に重要にもかかわらずトレーニングを受ける機会はほぼありません。その内容とは。

お宅に到着すると、患者さんはトイレで嘔吐しておりやや呼吸が乱れていた。

救急救命士は家族にも同様の症状がある方がいないかを尋ねたところ、1ヶ月前に患者さんの旦那さんが感染性胃腸炎だったことを聞いた。

皮膚がやや冷たく湿っており頻脈が気になったが、嘔吐しているためだろうと判断し、消化器内科をメインに診療している救急病院へ搬送した。

すると2時間後、搬送した病院から、先ほどの患者さんがCPAになったため救命救急センターへ搬送をしてほしいと要請が入った・・・。

多彩な症状を呈する心筋梗塞

こんな症例に当たりたくないですよね。

実はこの患者さん、急性心筋梗塞だったのですが、救急救命士は循環器疾患のことなど頭には全くなく、心電図モニターすら装着していませんでした。

今回の架空症例で登場した救急救命士の失敗点は

・反射的に胃腸炎疑いと決めつけた

・生理学的所見を軽視した

・多くの疾患をイメージできなかった

この3点です。

患者さんが、少しでも胸の症状を訴えてくれたら循環器対応の病院へ搬送したはずです。

ですが、実際はそう簡単ではありません。

痛みがわからない、痛みがない心筋梗塞は、全症例の22〜35%を占める。

女性は嘔気を訴えることが多い、女性の心筋梗塞の43%は胸痛なし。

引用:Step Beyond Resident4
著者:林寛之

だそうです。

めちゃくちゃ多いですよね。

女性・高齢者・糖尿病と聞けば、無痛性心筋梗塞が連想されますが、まさか主訴が嘔吐下痢だなんてびっくりします。


心筋梗塞なのに嘔吐や下痢?

今回の架空症例のように、嘔吐や下痢を訴える患者さんを診た場合、やはり第一に考えてしまうのは胃腸炎ではないかと思います。

しかし、嘔吐や下痢等の消化器症状が唯一の症状である心筋梗塞があるようです。

心窩部痛もしくは違和感、胸焼けなどの消化器症状を主訴として受診する急性心筋梗塞は全体の20%〜40%程度に及ぶとする報告もあります。

下壁梗塞の場合は、横隔膜に接する下壁の梗塞であるために患者は胸痛ではなく心窩部が痛いと訴え、また迷走神経反射の影響で悪心・嘔吐・下痢などの症状を伴うことあります。

引用:これだけは知っておきたいER診療の実際
出典:総合医学社

胸部症状の訴えがなく、消化器症状を訴える場合は心筋梗塞を念頭に置いてアセスメントすることが重要ですね。

今回の架空症例のように、緊急度が低い疾患からリストアップしてしまうと後手に回る可能性が高いです。

救急現場に行くまでの考え方と初期評価
救急現場に行くまでの重要な考え方とはどのようなものでしょうか。これまでの教育では、ほとんど学ぶ機会が少なかったことですが、とても重要なことです。もっと言うと、この時点で活動の7割は決まります。

心窩部痛・悪心・嘔吐・下痢があれば消化器疾患だろうという思い込みがあると、心電図検査さえ行われない可能性もあるのです。

引用:これだけは知っておきたいER診療の実際
出典:総合医学社

救急救命士が赴く救急現場では、まずは緊急度が高い疾患からアセスメントすることが極めて重要です。

今回の架空症例のような場合、頻度的には胃腸炎系が多いかもしれませんが、実際にアセスメントをするまでは、「胃腸炎」と決めつけてしまうことがないよう注意してください。

Take Home Message

病院と異なり、検査がほとんどできない救急救命士の現場。

そこで全てを把握することは不可能に近いですが、緊急度が高い疾患を連想しアセスメントを行うこと。

これこそ救急救命士に課せられた使命だと思います。

嘔吐や下痢の場合は心筋梗塞も考えよう

Q二郎でした。

Q二郎

Paramedicをこよなく愛するQ二郎 テキストだけでは習得し難いノウハウ伝授が趣味 live in Japan