救急救命士による初期評価と内因性ロード&ゴー

初期評価

この言葉を知らない救急救命士はいないはずです。

しかし、この初期評価。

本当にその目的を理解できていますか?

初期評価で異常があればロード&ゴーで搬送するだけ?

今回は、誰も教えてくれなかった内因性疾患における初期評価とロード&ゴーについてしっかりと学んでみたいと思います。

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外傷の初期評価

初期評価といえば、ABC評価のこと。

つまり、気道・呼吸・循環。

これは、救急救命士の方であれば知らない人はいないはずですし、養成校でもみっちり叩き込まれるはずです。

そして、初期評価という言葉自体は、外傷関連の教育が普及したことで浸透された言葉です。

JPTECやITLS等の外傷関連教育では、救急現場で見出すべき病態があらかじめ示されています。

つまり、初期評価でABCのトラブルを発見したら、それに対する処置と並行して、既にリストアップが示されている病態を次の全身観察で検索する流れですよね。

考え方としては極めてシンプルで効率的。

しかし逆を言えば、重症外傷の現場ではHigh Qualityな活動が求められます。

前述のとおり、初期評価という言葉は、外傷教育関連によって広く認知された言葉です。

そのような経緯があるからなのか、内因性疾患であっても「初期評価=外傷のアレ」というイメージが先行してしまっている印象があります。

こんなシチュエーションを見たことがあります。

想定付与:「60歳 男性 10分前からの胸痛」

患者さんに接触

救命士:「わかりますか?意識レベル1桁 初期評価の結果、Cに異常あり ロード&ゴーと判断し車内収容開始」

・・・これでは外傷の流れと全く同じです。

内因性疾患では、「今この患者さんには何が起こっていて緊急性は高いのか否か」を判断する必要があります。

多くのテキストを見てみても、初期評価で異常を認めた場合は内因性ロード&ゴーと判断し以降の評価を一旦中止して搬送を開始する。とあります。

言いたいことは分かります。

しかし、初期評価=外傷とのイメージが先行している感も否めません。

そして、外傷と内因性では、アプローチ法や考え方が全く異なります。

今回は、救急現場での内因性疾患における初期評価の新たな考え方を紹介します。

内因性疾患に対する初期評価

重症外傷の場合、それぞれの地域で多少は違いはあるかもしれませんが、基本的には救命救急センターへの搬送が一般的だと思います。

内因性疾患の場合、その疾患の治療方法等によって搬送すべき医療機関が異なります。

つまり救急救命士はトリアージ(病院選定)という重大な責任を担っていることになります。

そして、緊急度が高ければ一刻も早く病院へ搬送する必要があります。

さらに状況や状態によっては、救急救命士による処置も必要になる場合もあります。

救急救命士による内因性疾患に対する初期評価の目的をまとめると次のようになります。

・緊急度が高い疾患を認識する
・必要な処置を的確に実施する
・適切な医療機関搬送のためのトリアージ
・迅速かつ質の高いFirst-Callを実施する

これら全ては

根拠を持った判断

が必要になります。

そのためには、お作法のような初期評価はNGです。

当ブログでは、内因性疾患に対する新しい初期評価方法を紹介します。

通報内容からリストアップ

一般の方(非医療者)からの限られた通報内容から、どれだけの疾患や状況をリストアップできるかで活動全体の7割が左右される記事は以前に紹介しました。

何度も書いていますが、これ本当に大事です!

救急現場に到着するまでに考えること
救急現場に向かうまでに頭の中で行うべき作業があります。非常に重要にもかかわらずトレーニングを受ける機会はほぼありません。その内容とは。

今回は、「18歳 女性 呼吸苦」をテーマに一連の流れを見ていきましょう。

登場人物は、超優秀な救急救命士A君です。

A救命士は現場に出動中に、上記のような情報を得ることができました。現場はアパートの1室です。通報者は患者さんの彼氏からだそうです。

A救命士は、若い女性の呼吸苦で彼氏からの通報ということで、一瞬、「過換気症候群」が頭に浮かびましたが、まずは緊急度が高い疾患から考えてリストアップを作る必要があることを知っていました。

A救命士は、リストアップの順番を、アナフィラキシーショック、急性喉頭蓋炎、異物による窒息、気管支喘息、気胸、特発性縦隔気腫、そして最後に過換気症候群としました。

初期評価

アパートの玄関を開けると、奥の部屋にあるベッドの上で座っている患者さんの背中が見えました。彼氏が心配そうに手を握っています。

玄関で靴を脱ぎ、奥の部屋に向かっていると、何やらゼィゼィと嫌な呼吸音が聞こえます。同時に患者さんは肩で呼吸をしているようです。

A救命士によるパッと見の第一印象はよくありません。緊急性が高そうと判断しました。

顔色はやや紅潮しています。

意識レベルは1桁で、なんとか会話はできるようです。主訴は呼吸苦です。

ABC評価の結果、吸気時に喘鳴(Stridor)があり頻呼吸、肩呼吸を認めました。

また、脈は弱く速く皮膚は暖かく、見える範囲で蕁麻疹を認めました。

A救命士は生理学的評価の結果から、患者さんは呼吸と循環の異常を認め、出動中に頭の中で作成したリストアップ疾患の中から「アナフィラキシーショック」の疑いが濃厚であると判断しました。

そこで、隊員に高濃度酸素投与とSPO2モニターの装着、搬送準備を命じると同時に、想起したアナフィラキシーショックの精度を上げるために次のような最低限の問診を実施しました。

・何かを食べたか薬を服用したか?
・摂取後からどのくらい経ってからの発症か?
・アレルギーとエピペンの有無
・初めての症状か?
問診を行ったところ、風邪症状のため近くの内科クリニックを受診したところ、抗生剤を処方された。先ほどクリニックから帰宅して処方された抗生剤を服用し5分ほど経ったところで症状が発症した。これまでアレルギーを指摘されたこともなく、このような症状は初めてということでした。
A救命士は、「想起した疾患と初期評価による検証結果が一致する」と判断したため、車内収容を開始すると同時に、ショックに対応できる医療機関へのファーストコールを実施しました。
車内収容後、機関員はすぐに現場を出発し詳細な情報等はセカンドコールで医療機関へ伝えました。
この症例の現場滞在時間はなんと3分でした

内因性疾患での初期評価まとめ

これまで述べたように、外傷における初期評価と内因性における初期評価を混合してしまうと、内因性疾患への対応は難しいかもしれません。

内因性疾患に対する初期評価では、
出動中のリストアップ
生理学的評価で緊急度判断
精度を上げるための想起疾患に対する最低限の問診と観察

この3つがリンクする必要があります。

これら3つがリンクした上での内因性ロード&ゴーと判断できるようになることが、これからの救急救命士には必要なことではないかと思います。

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Take Home Message

・外傷での初期評価と内因性での初期評価は別!

・内因性における初期評価は次の3つで構成!
出動中のリストアップ
生理学的評価
精度を上げるための問診と観察

・内因性疾患での初期評価には相当の知識が必要

Q二郎

Paramedicをこよなく愛するQ二郎 テキストだけでは習得し難いノウハウ伝授が趣味 live in Japan