右室梗塞!心臓なら心原性ショックでしょ?!

前回の記事は心外閉塞・拘束性ショック(閉塞性ショック)について書きました。

心外閉塞・拘束性ショック!救急救命士に必要な知識
ショック第5弾!今回は心外閉塞・拘束性ショックをピックアップ!基本的なことからややマニアック?なことまで記事にします!閉塞性ショック?Obstructive Shock?ポイントは頸静脈怒張に注目!

今回は、救急救命士標準テキストではほとんど触れられていない疾患。

右室梗塞をピックアップします!

一般的に心筋梗塞といえば心原性ショックに分類されますが、この右室梗塞だけは特別です。

なんと。心外閉塞・拘束性(閉塞性)ショックに分類されます!

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心電図モニターST変化なし!
安心しないでください!

胸部症状を訴える患者さんに対して心電図モニターを装着しない救急救命士はいないと思います。
しかし、胸部症状を訴えていてもST変化がないから心筋梗塞は否定的と考える人は少なからず存在します。

まずは自分が使っている心電図が、モニターなのか12誘導心電図なのかを確認します。

例えばモニター心電図は、Ⅰ誘導からⅢ誘導しか表示されません。

機種によっては、電源を入れた直後はⅡ誘導が表示されるように設定されていますので手動で誘導表示を切り替える必要があります。

また、虚血部位によってST変化が現れる誘導が異なります。

つまり、Ⅱ誘導ではST変化を認めないが、12誘導心電図を装着するとV2誘導からV4誘導でST上昇が認められるなんてことがありますよね。

これについては成書をご確認ください。

最近では、ほとんどの救急車両に12誘導心電図が積載されています。

虚血性心疾患を疑ったら早期に12誘導心電図を装着してくださいね。

「じゃあ12誘導心電図でST変化がなければ否定していいの?」と思われるかもしれません。

心電図が正常であるということは急性心筋梗塞を100%除外する理由にはならない。急性心筋梗塞の6.4%が正常心電図であったという報告がある。

出典元:レジデント2012Vol.5.No.9「防ぎうる死」を救う救急初期対応
出 版:医学出版

ST変化があれば急性冠症候群の疑いが強いですが、ST変化がなくても急性冠症候群は全く否定できません。

とは言っても。

狭い救急車の中で乱雑なケーブルを12本も・・・

大変ですよねぇ、ホント。

簡便で、かつ精度が高い12誘導心電図が発売されていましたが今は製造中止になりました。

救急現場こそ、この簡易的な12誘導心電図がベストなのになぁと残念です。

右室梗塞は重要な救急疾患!

前壁が障害されれば前壁梗塞。

同じように右室が障害されれば右室梗塞です。

まずは冠状動脈の走行を成書を参照しながら確認してください。

今回の主役「右冠状動脈」は心臓の下側(下壁)と刺激伝導系を含む右心系の栄養血管です。

つまり、下壁梗塞は右冠状動脈の虚血によって起こるため、同じ血管から栄養を受けている刺激伝導系や右室も障害を受けている可能性が高いわけです。

右室梗塞は、下壁梗塞に合併(25%〜40%)することが多く、下壁心筋梗塞・血圧低下・頸静脈怒張を見た場合は、右室梗塞を疑わなければならない。

出典元:Step Beyond Resident1
著 者:林寛之

イメージとしては、右室系が障害を受けると右室の収縮力が低下することで肺循環が低下する。すなわち左室系の前負荷が低下することで全身への拍出量が低下するわけです。

右室は血液をどんどん流せないため次第に右室系の圧は上昇します。

それに伴い、静脈圧が上昇することで頸静脈の怒張が見られるというわけですね。


心電図はどうなるの?

12誘導心電図を装着した場合、下壁梗塞であれば

Ⅱ誘導、Ⅲ誘導、aVf誘導でST変化を認めます。

下壁も右室も同じ責任血管の障害のため、下壁梗塞を認めれば右室梗塞もチェックする必要があります。

ではどうするのか?

それは、右側胸部誘導と呼ばれる方法で12誘導心電図を装着します。

使用する心電図はいつもと同じ標準12誘導心電図です。

V1(赤)とV2(黄)、四肢誘導はそのままの位置です。

そしてV3誘導からV6誘導の貼る位置を、通常の位置と真逆に貼ります。(つまり高さは同じ、左側ではなく右胸部へ貼る)

その時、V4R誘導とV5R誘導でST上昇が認められれば右室梗塞の疑いが濃厚となります。

※Rは右(Right)の意味

搬送先医療機関まで距離が長い場合は、右側胸部誘導心電図を測定して医師に報告するといいかと思います。

輸液負荷?心臓なのに輸液するの?

救急救命士法改正に伴い、いわゆるショック状態の患者に対して、地域のルールに従い輸液を行うことが可能になりましたよね。

ただし、心原性ショックは適応外になる地域がほとんどです。

でも「右室梗塞」は、心外閉塞・拘束性ショックです。

左室機能は保たれているにも関わらず、右室の動きが悪いために肺動脈への拍出量が低下する。そして結果的には全身への拍出量が低下するのがこの疾患の病態。

右室梗塞の初期治療で必要なことは「輸液負荷」です。

右室梗塞では輸液を控えるのではなく適正な輸液が必要とされる。

出典元:救急救命士標準テキスト追補版

右室梗塞以外の心筋梗塞によるショックは心原性ショックであるのに対して、右室梗塞によるショックは閉塞性ショックである。心原性ショックへの昇圧治療はカテコラミンの投与であるのに対して、閉塞性ショックへの昇圧治療は輸液負荷になる。

出典元:ERで役立つ救急症候学
著 者:河野寛幸

つまり、右心系は収縮力が低下しているため、バンバン輸液することによって圧を上げて左心系に送ろうということです。

救急救命士標準テキスト追補版にもこのことは明記されています。

さらにはAMLSにも明記されています。

そして第9版救急救命士標準テキスト下巻P684の図を見てください。

※引用:第9版救急救命士標準テキスト下巻

これまでの教育を受けた方のほとんどは、「心臓なのに下肢挙上?!」と思われますよね。

でもこれ。

今回の記事内容を見て頂けると、この図の意味がご理解いただけると思います。

救急救命士は基本的に輸液不可です

まずは、ルールに反する可能性が高いからです。

右室梗塞によるショックは厳密には心原性ショックではありません。

標準テキスト追補版にも、右室梗塞には適正な輸液が必要であると書いてあります。

ただし、標準テキストでは「心原性ショック」として扱われています。

どんなに知識があってもルールには従うべきです。

そしてもう一つ。

実は、右室梗塞と鑑別が必要な疾患の一つに大動脈解離があります。

これは病院で検査をしないと分かりません。

Take Home Message

・Ⅱ,Ⅲ,aVfでST上昇があれば下壁梗塞か!?
・下壁梗塞を考えたら右側胸部誘導心電図!
・V3R,V4RでST上昇があれば右室梗塞か?!
・右室梗塞を考えたら血圧は両側で測定!
・右室梗塞は心外閉塞・拘束性ショックだよ!
・輸液は必要。でも救命士はできません。

Q二郎

Paramedicをこよなく愛するQ二郎 テキストだけでは習得し難いノウハウ伝授が趣味 live in Japan