救急現場に到着するまでに考えること

救急現場に向かう段階で、どれだけの疾患や状況がイメージできるか次第で、活動全体の7割が左右される点については記事に書きました。

今回は、それについて詳しく記事に書きたいと思います。

本記事の内容は医学内容ではなく考え方の1つとして紹介します

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問題と課題

救急救命士が受講できるOff the job Training、つまりコースと呼ばれるものの大半は、「外傷」に主眼を置いたものが多く、出動中からシミュレーションが開始されるものもあるのですが、「高リスク受傷機転が疑われるためロード&ゴーで行きます」で終わったり、コースによっては、既に現場に到着したシーンからシミュレーションがスタートするものもあります。

救急救命士は救急現場のプロですから、現場に向かうまでの思考力もしっかりとトレーニングを積む必要があるはずです。

到着からスタートではなく、現場に到着するまでの思考力です。

「行ってみたらショックだった」

「行ってみたら心筋梗塞だった」

「行ってみたら心肺機能停止だった」

こんな行ってみたら症候群(なんじゃそりゃw)を経験した方も多いと思います。

これらを未然に防ぐためにも「現場に到着するまでの思考力」を身につける必要があります。

しかし、現状では、そのような思考力を鍛えることができる、もしくは力を入れているコースはほとんどないのではないかと思います。

CALL ASSESSMENT

通報を受けて現場に到着するまでに、様々な病態や疾患名をリストアップします。

この作業のことを当ブログでは

CALL ASSESSMENT」と呼びます。

「呼吸器系疾患」とか「心疾患」のように漠然としたリストアップはNGです。

後手に回る可能性があります。

可能な限り疾患名や病態をリストアップすることが重要です。

今回は、いくつかの架空の症例をCALL ASSESSMENTしてみましょう。

ケース1

Call Assessmentはどうでしょうか?

おそらく全ての方が「心筋梗塞」を真っ先にイメージすると思います。

他にはどうでしょうか?

ご存知の方も多いかもしれませんが、ここではKiller Chest painを考えます。

つまり

・急性冠症候群

・急性大動脈解離

・肺血栓塞栓症

・気胸

・特発性食道破裂

これらがリストアップできれば、現場に到着してすぐ行う初期評価で重点的に観察する項目が決まってきます。

そして、もう一つ。

5分前に症状を自覚してすぐに救急車を要請しているということ。

つまり、「突然に発症」して、「痛みは強い」ということが想像できます。

ケース2

キーワードは、「倒れた」と「今は会話できる」この2つです。

「倒れた」と聞くと、多くの方は脳卒中を真っ先にイメージすることが多いかもしれません。

もちろん間違ってはいません。

しかし、「倒れたが今は会話できる」

ということは、どのような病態がイメージできますか?

一過性意識消失

つまり、失神か痙攣。とりあえず、これら2つを念頭に観察と問診を行う必要があることがイメージできるわけです。

例えば、本人の状態や問診内容、目撃者からの情報で失神の疑いが強いとイメージできれば、その後の観察は、失神にターゲットを絞って評価や病院選定をすることになります。

さらに、倒れた時に頭を負傷しているかもしれないという点も想像できるため、念のためネックカラーや止血セットも持って行こうとなるわけです。

ケース3

Call Assessmentによるリストアップはどうでしょうか。

おそらく多くの方が、「心不全」や「肺炎」を考えたと思います。

OKです。

では、このようなケースはどうでしょうか?

同じ主訴です。

ただし、年齢が異なります。

この場合のリストアップはどうでしょうか。

過換気症候群も考えられます。しかし、何か薬や食べ物を摂った後の発症だったら?

リストアップの順番はこのような感じでしょうか。

・異物による窒息

・アナフィラキシー

・気管支喘息

・気胸、縦隔気腫

・過換気症候群

このリストアップは、上から順に、緊急度が高いものから挙げることが非常に重要です。

そして、現場に着いた後も、この順番で評価することが重要です。

今回のケースでは、同じ主訴でも、年齢によって考えるべき疾患や病態が異なることを考えてみました。

ケース4

ケース1からケース3までは比較的イメージし易かったかもしれません。

しかし、この内容の方が、現実的かもしれません。

このような内容によるリストアップはどうでしょうか。

既往歴に糖尿病があるため、低血糖発作も考えられます。

しかし、「気分が悪い・気分不良」という訴えには注意が必要です。(エビデンスはありませんが)

結果的に、この想定疾患は「急性心筋梗塞」です。

このような主訴の場合は、ショックになり得る疾患を全てイメージするべきです。

このケースが、例えば入浴中に発症との情報を得たら何を考えますか?

例えば、飲酒中だったら?

常に最悪のケースをイメージしてリストアップすることが非常に重要です。

Take Home Message

このような思考力を鍛えるトレーニングを受ける機会は多くありません。

しかし、活動全体の7割を左右する非常に重要な作業です。

・Call Assessmentで疾患をリストアップ
・多くの引き出し(知識)が必要となる

Q二郎

Paramedicをこよなく愛するQ二郎 テキストだけでは習得し難いノウハウ伝授が趣味 live in Japan