救急救命士必見!ショックへの対応編1

平成26年に救急救命士法が改正されたことで、これまではCPAのみに許されていた静脈路確保が特定行為に追加され、心肺機能停止前にも実施可能となりました。

これにより、ショックに関する知識の習得は以前にも増して重要となりましたが、救急現場に適した良書等を見つけることは容易ではありません。

ショックの傷病者に対する救急隊の対応方針を決定する際には、ショックの種類を鑑別することが重要である。

出典元:救急救命士標準テキスト追補版|へるす出版

そうです。

救急救命士は的確にショックを見抜き、そして原因を判断する必要があります。

そこで今回は、救急救命士必見!ショックへの対応編と題し、救急現場で使える内容をシリーズで書いていきます!

※ショックの詳しい病態生理等は成書をご参照ください
※あくまでも救急現場向けですので全てが記載の内容通りではありません

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早速ですが症例(架空)です

70歳男性 主訴は気分不良、ふらつき
CALL ASSESSMENTによって救急隊は頭の中でリストアップを作成した。
脳卒中を第一に考えたが、それ以外はリストアップすることが困難であった。
救急隊が到着した際、患者さんはソファーに仰臥位、顔色はやや蒼白で冷汗があるようだ。
初期評価を実施。
気道は開通し呼吸がやや速く、橈骨動脈は弱く冷感が認められた。
また、意識レベルはJCSクリアで、麻痺や構音障害、頭痛はなかった。
この時点で、リストアップした脳卒中の可能性が低くなったためリストアップを組み立て直そうと判断した。

隊員にバイタルサイン測定を命じ、問診を行った。
「トイレに行こうと椅子から立ち上がった際にふらつき感を自覚した。そのため、座り込んでいたが気分が悪くなった。既往歴は高血圧でメインテート®︎服用中、また、腰痛症のため整形外科でロキソニンを処方されている」
このような情報を得ることができた。
バイタルサインは以下のとおり。
意識レベルクリア
呼吸数28回
脈拍数85回
血圧は聴診で110/90mmHg
心電図モニターはSinus(Ⅰ〜Ⅲ誘導)

SPO2は画像のような数値であった。
ここで問題です。
1 生理学的評価の結果と、脈拍数や血圧の値に違和感を感じますか?
2 この患者さんに対して酸素投与は実施しますか?
3 この後、どのような問診や観察を行いますか?
読み進めながら考えてみてください。
CALL ASSESSMENTについてはこの記事をチェック!
救急現場に到着するまでに考えること
救急現場に向かうまでに頭の中で行うべき作業があります。非常に重要にもかかわらずトレーニングを受ける機会はほぼありません。その内容とは。

ショックに関して必要な知識

このブログをご覧になっている方は、救急救命士の方か、救急救命士を目指す学生さんでしょうから、「ショックとは何ぞや!」のような基本的な話はしません。

ショックの病態生理については成書をご覧ください。

ここでは、テキスト等には記載されていない、もしくは記載が充分ではないけれど物凄く重要なことを列挙していきますね。

ショックはなぜ危険?

「そりゃ死に至るから危険でしょ!」

と言われそうですけど、ここは医学的に説明できると格好いいですよ!

ショックの定義を知っていれば何てことはないですね。

つまり、嫌気性代謝が亢進することによってATPがほとんど作られず最終的には末梢組織の細胞が死に至ります。

末梢組織は低酸素状態になっているわけですから酸素投与は必須ですよね。

下がって上がるのが当然でしょ!

ショックと聞けば、「血圧は下がって脈拍数は上がる」とイメージする方が多いですね。

確かに典型的にはそうでしょう。

しかし、ショック状態であっても頻脈になりにくい人たちがいます!

・高齢者
・運動選手
・妊婦さん
・降圧剤(B遮断薬、Ca拮抗薬)服用者

高齢者は、交感神経の感受性が低下しているため頻脈になりにくいです。

運動選手はいわゆるスポーツ心臓。

妊娠すると、生理的に普段から頻脈になります。

そして、高血圧に対して服用する降圧剤。代表的な薬は覚えておく方がいいでしょう。

当然のことですが、血圧の値だけでショックを判断することは危険です。

それから、普段の血圧との比較も重要です。

もし仮に、普段の収縮期血圧が160mmHg前後の人が110mmHgの血圧を呈していた場合はショックと判断するべきです。

自動血圧計はやめてネ!

自動血圧計は手間を省き便利である一方で、時に判断を狂わせる要因にもなります。

結論から言うと、自動血圧計は救急現場では使用すべきではありません

ショック状態の場合、正確な値はほとんど測定できないので、機械が何回も再測定することになります。

測定される側も痛いんですよね、アレ。

何回も再測定された挙句に表示されるのは・・・

「30/ーmmHg」

なんじゃこりゃ!

ってことになります。

そして何より時間がかかります。

ショック状態であれば目標3分で現場出発したいところです。

なので最初からアナログで測定しましょう。その方が速くて正確です。

ショック時の血圧

まずは言葉の確認です。

脈圧

左右の橈骨動脈を触って「脈圧左右差なし」と言う人が多いですが全くの間違いです。

脈圧とは、収縮期血圧と拡張期血圧の差です。

脈拍がしっかりと触れるということは、脈圧がある程度保たれているということです。

では本題です。

例えば、吐血した患者さんの収縮期血圧が70mmHgだとしたら、全ての方がショックだと認識できるはずです。

では、吐血した患者さんの血圧が100/80mmHg(聴診)だったら?

多くの方は拡張期血圧をしっかりとアセスメントできていないかもしれません。

循環血液量減少性ショックを例に考えてみましょう。
※血液分布異常性ショックでは異なります

出血等によって循環血液量が減少すると、重要臓器への血流を確保するために末梢の血管は収縮しますよね。

そうなると、血管は拡がり難くなるため、拡張期血圧は上昇するわけです。

収縮期血圧が低下すれば「低血圧性ショック」

いよいよヤバいわけですが拡張期血圧は割と早い段階で反応します。

拡張期血圧が上昇して脈圧が狭くなってきた

脈圧が狭まったことで脈拍の触知も弱く感じてくる

高度な検査器具ではなく、バイタルサインをアセスメントすることも重要です。

そのためには、機械だけに頼らず質の高いバイタルサインの測定が必要です。


酸素化は保たれているけど酸素いる?

「ショックだ!酸素投与だ!」

と考える救急救命士もいれば

「ショックだけど酸素化100%だねぇ」

と思う救急救命士もいるかもしれません。

結論から言うと

ショックでは酸素投与は必須です。それも高濃度酸素投与

上の方で書きましたが、ショックになると末梢組織は血流を犠牲にしているため酸素不足に陥っています。

本当は「酸素投与するべきである」としっかりと説明できる公式もあるのですが、眠たくなるといけないので割愛します。

それともう一つ。

自動血圧計もそうですが、機械を全力で信用してはいけません。

パルスオキシメーターの測定が困難な場合はどんな時か。

それは成書を見て頂きたいのですが、脈波をしっかりと評価しましょう。

この赤い丸で囲んだ箇所が脈波です。

これが図のようにしっかりと山になっていればその数値はある程度信用できます。

なぜなら末梢への血流が確保されていると判断できるからです。

この場合も脈波の山はしっかり表示されています。

にも関わらず数値は82%と低いですよね。

これはしっかり酸素投与しないといけませんね。

これがショックの時や身体の震えが激しい時などでは、山がギザギザで不明瞭になります。

そんな時は、機械の数値に頼らず身体所見から判断することが重要です。


症例の問題を見てみましょう

もうお分かりですよね?

生理学的評価ではショック所見があるにも関わらず、頻脈でもなければ血圧値も一見すると保たれているように見えます。しかし、この患者さん。既往に高血圧があって、メインテート®︎(B遮断薬)を内服しています。

そしてよく聞けば普段の血圧は150mmHgくらいだそうです。今は110mmHgですよね。

さらに拡張期血圧は90mmHgなので、脈圧は20mmHgです。

脈圧の狭小化が認められます。

パルスオキシメーターを装着すると値は100%ですが、脈波の山がギザギザで不明瞭です。

生理学的評価の結果や血圧値から判断すると、この患者さんはショックです。

高濃度酸素投与を行いますよね。

今回はここまで!

次回は、この患者さんがショックに至った原因を学びましょう!

Q二郎

Paramedicをこよなく愛するQ二郎 テキストだけでは習得し難いノウハウ伝授が趣味 live in Japan